平成16年9月30日、私たちの所属する(社)日本放射線技師会(以下:日放技)が医療科学社より訴訟を起こされました。すでにご存知の方もおられることと思います。ご存知でない方もNetwork Nowに唐突に掲載された監事謝罪文や、現執行部の業績を強調した一連のキャンペーンをご覧になり、またJART4月号に掲載された理事会議事録を読まれて、その不自然さに驚かれた事でしょう。今回起こった訴訟事件は技師会だけの問題にとどまらず、会員以外の診療放射線技師の未来にも等しく暗雲を投げかける重要な要素を含んでおり、見逃すことの出来ない問題です。
私たち(社)大阪府放射線技師会(以下:大放技)理事会はこの事態を深刻に受け止め、大放技としてどのように対応すればよいのか、多くの時間を費やして議論して参りました。その結果、社団法人として現執行部に退任要求を行うという結論に至りました。これは大放技の理事全員と趣旨にご賛同いただいた代議員 ・予備代議員の署名をつけ、退任要求書として日放技総会に提出するというものです。本文は大放技理事会が退任要求を出すに至った根拠となる、いくつかの事件と、事件に対する日放技執行部の対応を皆様にお知らせし、大放技理事会の行動をご理解頂くために掲載するものです。
大阪府の会員の皆様には、詳細の説明が遅れたことをお詫びすると共に、大放技理事会の決定にご理解ご賛同いただきますようお願い致します。
1.事件の事実関係と問題点
さて、日放技問題ついては多くの事件が取りざたされていますが、大放技理事会が最も重要と考えた事実関係の明白なものについてお知らせ致します。
1.1 発端
事件は2年前に遡(さかのぼ)ります。現在の執行部は、平成15年11月18日に出版会社なるものを設立登記いたしました。この会社は「(株)日本放射線技師会出版会」という名称を名乗り、突然技師会の出版業務を請け負うことになったと発表されました。蓋を開けると、この会社の取締役には執行部の常務理事数名が名を連ねておりました。この事件の重要な問題点は、日放技との契約(平成15年11月7日)から会社設立・登記(平成15年11月18日)までのすべてが理事会に諮ることなく行われたことです。理事会が、会社設立に関与している理事の取締役辞任を条件として承認したのが、平成16年3月19日です。その後、総会も乗り切り、うやむやのうちに会社運営が今日まで行われてきました。
この事件がすべての発端といえます。そこで、この事件の問題点をまとめると、
- 理事会を通さずに出版会社を設立したこと。
- 理事会を通さずにその会社と契約を行ったこと。
- 理事会を通さずに私企業である出版会社に「日本放射線技師会」という公益法人の名称を使用させたこと。
- 設立した出版会社は設立当初実質的な事務所を持たず、私企業であるにも関わらず日放技事務所を会社事務所として使用していたこと。
- 公益法人の役員が、商取引の契約関係にある私企業の取締役を兼務していたこと。
- 理事会がその会社を事後承認として認めたこと。
- 事件発覚後、会社設立に関わった執行部役員が責任を取らなかったこと。
- 執行部が会員に事件の詳細を説明せず、謝罪もしなかったこと。
などです。
然るべき決定機関の裁定もなく、私企業に公益法人の名称使用許可を与え、一部の法人理事が私企業の取締役を兼任するという構図は、通常の公益法人の運営から著しく逸脱しています。
この事件は昨年の日放技総会において追及されましたが、情報が隠蔽されていたため事件を知らなかった代議員が多数おり、認識にずれを残したまま総会が進行し、引責を決議するには至りませんでした。もちろん、総会で認められたのですから会社設立事件は一件落着、執行部は無罪放免ということになったのですが、このときの総会決議が後に大きな禍根となり、以下の事件が起こりました。
1.2 会と会員の名誉を毀損する事件
この出版会社と執行部は、その後もっと重要な失態を演じ、私たちの未来に重大な損益を与えました。その失態とは、他社出版物の海賊版違法出版です。これは過去にテキストとして他の出版社(医療科学社)から出版されていたものを無断で海賊版として出版(認定講習会テキスト)したという事件です。その後、日放技は出版社から訴えられ(平成16年9月30日)、裁判所から印刷、製本、出版,頒布をしてはならないという仮処分が出されました(平成16年11月10日付)。この訴えられた債務者とは(社)日本放射線技師会であり、決して会長や執行部など一部の人間ではありません。私たち会員全員に責任があります。
仮処分とは裁判所が債権者と債務者の意見を聞き調査した結果、裁判の結審を待っていては債権者に著しい不利益が起こると判断した場合に、債権者の利益を守るため前述の出版差し止めなどの法的な処置を行うものです。このように仮処分が出された場合、一般的には、債務者側は不利だとされています。この件に関しては日放技側が反証争点を回避したため、結審での敗訴は濃厚と思われます。
公益法人が自らの意思で海賊版の出版を画策し、実際に行うという事態は、通常の法人運営では考えられない行為であり、結審を待つまでも無く私たちの名誉は著しく毀損されたことになります。
この事件については、日放技監事が厚生労働省に告発文を提出し、その後撤回するという茶番がありました。JART4月号理事会議事録、ホームページやNetwork Nowに書かれているものです。この顛末の中で重要なことは、海賊版出版と仮処分は厳然たる事実であり、厚生労働省はすでにこの事実を知っているということです。
私たちの未来に重大な損益を与えるというのは、実にこの一点にあります。もちろん現執行部は誰も責任を取ると発言していませんし、会の名誉を著しく傷つけたことを会員に謝罪もしていません。
あなたが厚生労働省の担当官なら、この事態をどのように見るでしょうか?この問題が顕在化した後に、まだ同じ人間が会長であり執行体制もそのままだと知ったら、どのように思うでしょうか?自浄能力のない職業集団だと烙印を押されることは必至ではないでしょうか。
このままでは私達と私達の後輩達に未来はありません。このような団体が診療報酬について意見を表明しても相手にされないでしょう。もちろん他職種の人たちからの信頼も得られないでしょう。私たち大放技理事会はこれらのことを憂慮し、技師会会員の自浄能力を示すため、このたびの決断を致しました。
2.公益性とは?
執行部は、出版に関わる費用がいかに安くなったかをNetwork Nowで盛んにキャンペーンしておりますが、それは目先の利益でしか有りません。有益な事であれば理事会や総会の承認後に行えばよかったのです。しかし、実際にはこの過程は無視されました。大局的には、そのような執行部の運営体制をそのまま継続していることの社会的、道義的不利益は、比べ物にならないほど大きいと考えられます。プロ野球の末端のスカウトが、食事代を学生に支払ったということで、その行為に直接関与しなかった大企業の会長や社長が道義的な責任を取って辞任する時代なのです。私企業であってもその公共性を重んじ、そのように対応しているのです。
公益法人は社会規範を遵守して活動することが使命であります。日放技執行部はこのような事態を引き起こして、なお責任を取っておりません。これでは公益法人のトップとしての自覚に欠けると判断せざるを得ません。
現執行部が辞任しても、どうせ次の人間も同じ「穴のムジナ」だという方もおられます。しかし、公益法人の運営としては、間違ったことをした人間が責任を取って辞めるということが重要です。前任者がそのような過ちを犯して辞任したということを、眼前で見て経験していることが重要なのです。
3.情報を操作するということ
大放技は情報を持つことができたので、理事会がこのような対応をしていますが、他の多くの地方では、今回の重要な情報は会員に配信されておらず、多くの会員はNetwork Nowに書かれていることだけが真実だと信じているようです。都合の悪い情報は開示せず自分達の都合の良い情報のみを真実のように配信しているのです。
この都合の良い情報とはどのようなものなのでしょう。一例を示すとNetwork Nowに掲載された理事会での監事謝罪という記事です。平成17年2月26日に理事会が開催され、その速報として監事文書に関する監事の謝罪文がNetwork Now 350号に掲載されました。監事文書がどのような告発を行ったかには一切触れずに、監事文書の一部について監事が謝罪したことを取り上げ、文書に記述されていたことすべてがでっち上げであったかのような印象を与えています。これでは全国の会員は何のことかさっぱり分からなかったことと思います。その後、議事録がJART4月号に掲載されました。この理事会では、監事文書の発端となった最も重要な仮処分対策については、別の問題だとして論点をすり替え、議論を避けています。監事謝罪を掲載するなら、そもそもどのような告発があったのか、その告発文のどの箇所について謝罪したのかを掲載すべきですが、一切そのことについて記述が有りません。その他にも、会員の声として投書が掲載されていますが、執行部を感情的に支持する意見は掲載されていますが、問題点を糾弾している声は掲載されていません。一般会員は、このような会社設立の経緯や海賊版出版と仮処分の話を日放技から届く情報では知ることは出来ませんでした。この事件で初めて明るみに出たのです。情報の操作を意図的に行っていると判断されても仕方がありません。
4.現日放技理事会の問題点を指摘する
大放技理事会は、2月26日の日放技理事会についても、色々問題を含んでいると考えています。
根本的な理事会機能として、仮処分事件が発覚した後の理事会で、本来どのようなことが審議されねばならなかったかということです。議事録によると監事文書に対して会長執行部側が質すという形だったようですが、真に重要な火急の問題は、海賊版による仮処分事件への対処だったはずです。何度か仮処分を受けたことの問題を議論しようと発言した理事もおりましたが、全く取り上げられることはありませんでした。主な理由としては裁判で係争中であるため、議論できないということでした。
しかし、現実問題として仮処分を受けた事実がある以上、このような不始末をしでかし、会の名誉を著しく傷つけたことをどのように会員に詫び、どのように責任を取るかを理事一同が真剣に話し合わねばならなかったのです。それを考えるのが理事会の仕事です。このような問題は裁判の係争内容の詳細とは関係なく議論できます。しかし、前述の通り運営されました。執行部のための理事会なのか会員のための理事会なのかが問われています。
5.各種議論に対する見解
現在会員の皆さんが疑問に思われていることについて私たちの見解を述べます。
【意見1】
「 あのような文書をいきなり厚生労働大臣あてに送りつけるのは問題だ。厚労大臣に送りつける前に、理事会で討議し、臨時総会を開き、それでも埒が明かない時に始めて厚労省に報告するべきだ」
【見解1】
これは本来ならば正論です。確かに監事の手落ちであり問題です。しかし、理事達はそれを糾弾出来る立場だったのでしょうか。そのように理事会に諮らない行為を咎めるなら、執行部が理事会に諮らずに会社を設立したことを認めてしまったことについて自省すべきです。そのときに設立に関与した理事を処分すれば、このような不名誉な問題は起きませんでした。このような理事会無視が罷り通るのなら、すべての案件は後日理事会を通せば良いということになります。これでは理事会は不要です。この事件は、理事会が機能していない事を象徴的に表しています。
現状では監事が悪い、執行部が悪いと水掛け論をするのではなく、すでに厚労省が知ってしまった以上、速やかに会の運営を正常化し、自浄したことを世間に示して組織としての再出発を図らねばなりません。
【意見2】
「(株)出版会については平成16年3月19日の理事会において、役員を兼務しないことを条件に決着済みである。平成16年度総会においても報告があり、事業計画として承認されている。出版会を設立したことで、会員の中に不利益を被った人がいるのか? また、明らかに株主が大もうけした事実があるのか?出版費用が大幅に軽減されている現実がある。それより、今まで大もうけしていたと思われる医療科学社をどう考えるか」
【見解2】
会の健全な運営という観点から見ると、誰かが利益を得たか、または不利益を得たかということは一見重要ですが、事件の本質からは全く関係ないことです。出版費用の削減と不法な会社設立や海賊出版が相殺されるようなものではありません。役員を兼務しないことにしたから一件落着というのは不自然で非常識な決議です。これほどの事件で、誰も責任を取った形跡もありませんし、議事録にも責任問題の追及がありません。これを見ても理事会がすでに機能を失っていたことが明白です。
過去に医療科学社が暴利を貪っていたかどうかは、私たちの手元に証拠や資料がないので判断できません。しかし、仮に貪っていたとして、前述したようにその時期の執行部の中心部には熊谷氏がおられました。現在の時点で過去を糾弾している人間が過去の中心人物だということになります。過去と現在は別の話ではありません。経費が削減できたことが技師の未来を売ってまで行うべき素晴らしいことだというなら、現執行部を更迭した後で、新体制がその出版会社と契約すればよいのです。どのようなからくりかは知る由もありませんが、安いなら使えばよいということです(後述)。私たちは会社設立に不正を働き、その会社で犯罪行為として海賊版を出版したことを追及しているのです。
【意見3】
「海賊版出版に関しては、地方技師会がテキストの配布を強く求めた経緯もあると思う。そもそも全ての権利が医療科学社に渡されていたということは誰も想像できなかったのではないか。和解勧告が出たことを考えると、技師会の言い分も裁判所は若干とはいえ認めたことになるのではないか。」
【見解3】
商取引に契約書があることは常識です。医療科学社と絶縁したことが悪いということではなく、医療科学社と絶縁するときに十分な検討と確認が必要だったということです。契約書の有無や内容を確認せずに医療科学社と絶縁し、海賊版を作るということに問題があります。事務員が勝手に行っていたという言い訳は通用しません。事務員を管理していた人間(会長および執行部)に責任があるということです。また、和解勧告は裁判所が技師会側の言い分も認めていることだというようなニュアンスで書かれていますが、裁判所は債権者と債務者の係争の法的な勝ち負けや正当性とは別に、常に和解を勧告するものです。決して日放技を認めたことにはなりません。また、和解が成立したとしても、その条件や保証内容が重要です。どちらが有利に和解したかで法の判断が、どちらを認めたかが分かります。和解は無罪の証明ではありません。
【意見4】
「大放技は代議員会に監事を呼んでその意見は聞いたのに、執行部側の意見を聞いていない。フェアではないと思う。」
【見解4】
執行部側はあらゆるメディア(JART, ホームページ,Network Now)を使用する立場にあり、情報を独占して配信していますので、その見解は十分述べられていると判断することが出来ます。しかし、日放技監事は見解を述べるべきメディアを一切持っていませんので、詳細を確認するためには、本人をお招きするしかなかったということです。また、大放技代議員会の数日後、熊谷会長が和歌山で講演されるので、釈明は聞けるとも判断しました。
【意見5】
「大放技は監事文書を会誌に掲載したが、その後監事の謝罪文が出されたことをどう考えるのか。会員を混乱させたことをどう考えるか」
【見解5】
大放技は監事文書の内容を検討し、その重要性を考慮して監事を大阪に招きその内容の信憑性について話を聞きました。監事からは真実であるとの発言があり、監事発言の重みを考慮して会誌に掲載致しました。その後監事が謝罪文を提出し、大放技の信頼を裏切った行為に対して、正式に抗議を行い、大放技に対する謝罪を求めております。その意味では、混乱を招いたことを大阪府会員の皆さんに深くお詫び致します。しかし、その後大放技理事会は独自に今回の事件を検討し、監事文書にとらわれることなく事実関係を重視して今回の結論に至りました。私たちの判断は監事文書とは無関係です。
【意見6】
「現執行部を更迭した後はどうなるのか、現在のセミナーなどはどうなるのか、今までの苦労が台無しになるのではないか、不安で退任要求を素直に支持できない」
【見解6】
大放技としては、現執行部の会社設立に関与した役員の退任を優先して活動致します。退任後は定款に沿って運営することになると考えられます。例えば会長、副会長、常務理事などの補欠選挙を経て、現役員の任期残余期間を暫定的に執行し、その期間内に選挙実施の公示を行い、総会にて選挙を行うということです。大放技としては現時点で特定の個人を会長として推薦するのではなく、正常な技師会運営の回復に尽力するということです。また、新執行体制に対して、現在の事業については継続を前提に提言していきます。会員の多くが多大な時間と費用を費やしている事業については、継続させることが重要で、その後、問題があると考えられた事業については見直しを図り、十分な説明の後、廃止するという姿勢です。安易に現執行部を全面否定するのではなく、会員にとって必要なものや重要なことは、新体制に対して継続を提言していくというスタンスです。
出版費用についても、新体制の下、入札において業者を決めればよいと考えています。現在の(株)技師会出版会が入札に応札することも受け容れるべきと考えます。透明な管理体制の下で透明な運営を行うべきと考えます。
【意見7】
「大放技が退任要求を理事会として出すのは理解できたので、一般会員として退任要求の運動に参加したいがどうすれば良いのか」
【見解7】
大放技は理事 ・代議員 ・予備代議員の署名をもって大阪府技師会の意思として行動いたしますので、一般会員の皆様への署名運動は致しません。
以上、様々な意見があるかと思いますが、大放技会員の皆さんも一度日本放射線技師会の定款第3章20条をご覧下さい(日放技HP掲載)。「会の名誉を毀損したしたときは理事会の議を経て除名することが出来る」とされています。
大放技理事会は常日頃より多くの皆さんのご支援のもと活動して参りました。いまこのような技師会の未曾有の危機に際して心を一つにし、大放技代表として誠実な対応をしてゆきます。何卒ご理解頂き、大放技理事会の退任要求活動にご協力を賜るようお願い致します。
私たち診療放射線技師は自浄能力のない無能集団ではないことを国民に示しましょう。
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