はじめに  

 昨今の技術革新はめざましく、多岐にわたる医療情報があふれ出てくる状態です。このコラムは、これらの輻輳する情報に埋もれながら生活する中で、私たちの業務に関連する情報をわかりやすく解説し、浅くとも広い範囲の情報を得ていただき、さらに調査する必要があるかどうかの判断材料として役立てていただくことを掲載の趣旨とします。

8月1日の「…省令の施行等について」  

 第1回目は平成16年8月1日に施行された「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行等について」です。きっと皆さんも雑誌等で見かけられたと思いますが、もしまだ内容を読んでいない方がおられましたらこの記事をお読みください。概要が解っていただけるかと思います。

改正の趣旨

 陽電子放射断層撮影装置を用いた検査(PET検査)が、新しい画像検査として近年急速に普及してきましたので、放射線障害防止の技術的基準に関して医療法施行規則の一部を改正して医療機関における安全管理のための整備を行うものです。

同位元素の定義
 PET装置で画像診断に用いるものは、医薬品であるか否かに関わらず、陽電子断層診療用放射性同位元素としました。診療用放射性同位元素と区分しました。

●届出事項
 陽電子断層診療用放射性同位元素を備えようとする場合又は備えている場合は、都道府県知事に届け出なければなりません。放射線障害の防止に関する「予防措置」については、所定の研修を終了していることなどを証明する書類が必要です。

●使用室の構造設備基準
 陽電子準備室、陽電子診察室、陽電子待機室としてそれぞれ区画されていることが必要です。また、使用室内にPET装置を操作する場所を設けてはいけません。

●廃棄施設の構造基準
 他のアイソトープと同様であるが、陽電子断層診療用放射性同位元素のみを管理区域内の廃棄施設で保管管理する場合は設備に技術基準を課さない。また、封をした日から起算して7日間を超えていれば管理区域から持ち出すことが可能です。

●所定の研修
 届出事項の予防措置に「陽電子断層撮影診療に関する所定の研修を終了し、…中略…安全管理に専ら従事させること。」とある。所定の研修は、関連団体の共催で平成17年1月8日(土),9日(日)の2日間横浜にて開催されます。(日放技ホームページ参照)所定の研修を終了していること等の事実を証明する書類の届出は、平成17年3月31日までとなっています。

●陽電子待機室
 PET製剤を投与された患者が検査までの間、陽電子診察室の隣接した場所で待機させる場所です。患者数が極めて少ない場合には設けなくてもよいとしています。既存の施設ではそれに準ずる場所を至急確保します。  

●「陽電子待機室」と「陽電子待機室に準ずる場所」の基準

1. 「陽電子待機室」の構造設備の基準
1)主要構造部等は、耐火構造又は不燃材料を用いた構造とすること。
2)陽電子待機室は区画されていること。
3)画壁等は、その外側における実効線量が1mSv/週以下になるように遮蔽すること ができるものであること.(待機する患者の人数、時間及び場所(配置)等を考慮し て画壁の外側における実効線量を評価し、1mSv/週以下となること(複合評価も必 要)。また、陽電子待機室の画壁が管理区域の境界にもなっている場合は、管理区域 の境界における実効線量が1.3mSv/3月以下となること(複合評価も必要)も確認す ること。

2. 「陽電子待機室に準ずる場所」の基準
1)「陽電子待機室」と同等の防護措置(上記1)及び3))を講じること.ただし、1)の 規定は防護衝立等で区画したものについては充当されないと考えられる。
2)放射線診療従事者、投与前の患者の投与された患者と至近距離で接する時間を可能 な限り短くすること等により、放射線診療従事者、投与前の患者の被ばく線量を可能 な限り少なくすること。
3)放射線診療従事者、投与された患者等以外の者が、「陽電子待機室に準ずる場所」 にみだりに立ち入り、また、近づくことがないよう、衝立等により区画化するととも に、その旨を示す標識を付けること。
4)「陽電子待機室に準ずる場所」は、「陽電子診療室」(PET検査室、製剤投与室 等)に隣接した場所であること。

【原文】 (医政発第0801001号)
医療法施行規則の一部を改正する省令の施行等について

 以上、多くの情報の中のごく一部をかいつまんで記述しました。さらに情報が必要な場合にはご自身で調べていただくか、学術委員会 gakujutsu@daihougi.ne.jp にお問い合わせください。お問い合わせに見合う資料がありましたら送らせていただきます。

学術部 坂下惠治