はじめに
相次いで発生している放射線治療における過剰照射や過少照射による医療事故の状況に対し、関連学会より当該病院をはじめ各医療機関等へ勧告がなされてきました。しかし、事故の直接原因を指摘し改善要求を行うだけでは抜本的な解決に至らず、平成１６年4月９日に厚生労働省医政局指導課長から各医療施設における放射線治療の安全管理体制の再点検について緊急要請がなされました。ここでは、放射線治療品質管理士制度についての一連の経過および現況について簡単に解説致します。
【放射線治療品質管理士制度について】
放射線治療の医療事故防止のために、放射線治療の関連５団体（日本医学物理学会、日本医学放射線学会、日本放射線技師会、日本放射線技術学会、日本放射線腫瘍学会（アイウエオ順））による「放射線治療の品質管理に関する委員会」が結成されました。その中で放射線治療に関連した誤照射事故を防止するためのワーキンググループが発足し鋭意検討を重ね、今般「放射線治療における医療事故防止のための安全管理体制の確立に向けて（提言）」と題する中間報告がなされました。この中では放射線治療の品質に関する専門的な管理体制の確立を推奨しており、その具体的な対策のひとつとして「放射線治療品質管理士」の制度化について今年度（平成16年度）から認定制度を立ち上げました。なおこの中間報告の作成と制度の創設をもって、この委員会は10月10日付けで発展的に解消され、「放射線治療品質管理機構」が新たに創設されました。
【放射線治療品質管理士とは】
放射線治療を安全に管理することを目的として、今まで診療放射線技師が行ってきた線量測定や放射線治療計画機器・システムの品質（精度）管理・保証（ＱＡ・ＱＣ）を専門的に担う職種です。平成１８年度の診療報酬改定に向けて、保険診療上の専門家として資格認定されるよう厚生労働省と折衝が行われようとしています。放射線治療品質管理料となるか施設管理料となるか未定ですが、資格認定者により品質管理についての取り組みがなされている施設では、保険点数加算、もしくは資格を有するものがいなければ加算をしないといった措置がなされるかもしれません。
【放射線治療品質管理士の資格申請について】
以下の１．と２．を満たした者に申請資格が与えられます。
１．放射線治療の実務経験（２年以上）を有し、治療品質管理（１年以上）に従事した者
２．（１）日本医学放射線学会の「医学物理士」あるいは（２）放射線治療専門技師認定機構（仮称）の「放射線治療専門技師（仮称）」
（暫定措置として、平成１６年度は、日本放射線腫瘍学会の「認定治療技師」、日本放射線技師会の「放射線治療技能検定２級」、または日本放射線技術学会の「放射線治療専門技師」となっています。）
【放射線治療品質管理士の資格授与について】
「放射線治療品質管理機構」が資格申請を受理した後に、資格審査を行います。その結果、申請資格を満たすと判断された者に対して、所定の講習と試験を行った上で、適格者に対して資格の授与を行います。ただし、平成１６年度は、試験は行われず講習のみにより資格の授与が行われます。第一回目の講習会は平成１７年１月に行われ、2月より第一期生が誕生致します。
【放射線治療品質管理士の資格更新について】
放射線治療品質管理士の資格の有効期間は３年間であり、更新手続きが必要となります。更新の際には、１．更新までの３年間に治療品質管理に１年以上従事したことを証明する書類、２．年一回の所定の講習を受講したことの証明が必要となります。
【放射線治療品質管理士の資格の喪失について】
放射線治療品質管理士は、１．資格の辞退したとき、２．申請更新を行わなかったとき、３．更新が認められなかったとき、４．適性を欠くと判断されたときに、資格を喪失します。
以上、放射線治療品質管理士制度の現況について簡単に解説致しました。この制度については今年度から動き出したものであり、日々新しい内容が関連団体、新聞報道でなされております。会員の皆様におかれましても最新の情報を取得していいただきますよう、以下に関連団体および参考資料を紹介致します。
【放射線治療品質管理に関する情報】
○ 日放技：放射線治療品質管理士制度について（04.10.20）
⇒放射線治療における医療事故防止のための安全管理体制の確立に向けて（中間報告）（PDF）
○ 日放技：放射線治療品質管理士講習会と認定のお知らせ（04.11.29）
○ 放射線治療品質管理機構ホームページ
○ 関連5団体ホームページ
日本放射線技師会： http://www.jart.jp/
日本放射線技術学会： http://www.jsrt.or.jp/
日本放射線腫瘍学会： http://www.jastro.jp/
日本医学放射線学会： http://www.radiology.or.jp/
日本医学物理学会： http://www.jsmp.org/
