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【 医用画像表示用モニタの品質管理に関するガイドライン 】
=(JESRA X-0093-2005)=

【 はじめに 】

 モニタ診断を導入する施設が増える中で、品質管理が行われていないモニタを読影に利用している実態に憂慮し、昨年8月、日本独自に医用モニタに関するガイドラインが作成されました。すでに、モニタ診断を実施している施設でも、モニタの輝度管理や品質管理を行っていない場合が多いようです。このガイドラインはあくまでも推奨ですが、読影精度を維持するために重要です。以下に概要をまとめてみましたので、ご一読下さい。


【 適用範囲・運用 】

 医療機関で医用画像を表示して読影を行うために 使用するカラーおよびモノクロモニタに適用されます。最大輝度や輝度比などの基準によってグレード1とグレード2に分類されていますが、どのグレードをどのように使用するかは特に規定はされていません。
 本ガイドラインの基準は、AAPM-TG18 およびIEC 61223 から引用され、これらの基準が変われば、見直しが行われます。
 各医療施設に品質保証委員会等を設置し、品質保証委員会等が任命するモニタ品質管理者の責任において、医用モニタの受入試験および不変性試験を実施します。


【 受入試験 】

 モニタの設置に伴い、使用する前に定められた仕様に適合していることを確認するために行う試験です。読影環境によるバラツキを防ぎ、試験結果の再現性を保つために、外部光を含まない状態で、目視と輝度測定によって行います。
 目視判定は、基準臨床画像とテストパターンを用いて、判定基準に入っていることを確認します。輝度測定による評価では、輝度計を用いて輝度均一性や最大輝度・最小輝度、コントラスト応答を測定し ます。コントラスト応答は輝度特性(GSDF) の精度を示し、輝度計と連動した専用ソフトがない場合は、煩雑な作業を要します。また、カラーモニタを複数台同時に使用する場合は、色度計によってモニタ間の色度偏差を計算し、判定する必要があります。


【 不変性試験 】

 使用中のモニタが、許容範囲内に入っていること を確認し、品質の維持・管理するために行います。 目視試験は、通常の読影環境(照明下)で行い、輝度測定は外部光を含まない状態で行います。
 不変性試験では、使用日ごとに行う試験と定期的な試験があります。使用日ごとの試験は、使用前に基準臨床画像とテストパターンを表示して、モニタの画質の全体的な目視評価を行います。定期的な試験は、受入試験とほぼ同じ内容で目視試験と輝度測定を行います。また、読影環境に変化がないことを確認するために、照度も測定します。試験間隔は、 CRT では3ヶ月、LCDでは6ヶ月を越えないように実施する必要があります。試験結果は3年間保管しなければなりません。判定基準を満たさなかった場合は、キャリブレーションを行い、再試験を実施します。


【 まとめ 】

 以上、「医用画像表示用モニタの品質管理に関するガイドライン」について簡単にご紹介させていた だきました。詳細は、以下のホームページをご参照下さい。基準画像やテストパターンもダウンロードすることができます。
 現状では、医用モニタをGSDFにキャリブレーションすることは、表示関数の混在という点から問題も残されていますが、モニタの品質維持・管理のために、ぜひ実施してみてください。


【 参考資料等 】

*GSDF: Grayscale Standard Display Functionの略で、DICOM Part14 に規定されている画像表示装置の表示関数。低輝度から高輝度まで一定のコントラスト分解能が得られる表示特性を持つ。GSDFにキャリブレーションされた表示装置では、最大輝度が異なっても同じ画像なら同じような見え方になる。

JIRA 医用画像システム部会のホームページ
http://www.jira-net.or.jp/commission/system/index.html
(モニタ診断システム委員会)


学術部 藤田秀樹