日本が有するCT 装置の台数は世界中のCT のう ちの約2割という報告がある 。そのCT が医療の中で画像診断に寄与する効果は計り知れないものがあ ると考えられるが 、反面 、CT による日本国民の医療被ばくも統計学的には莫大なものとなってしまっ ている 。そのことがメディアに大きく報道されるきっかけとなったのが英国の医学雑誌 「ランセット 」 2004年1月号に掲載された論文 「Risk of cancerfrom diagnostic X-rays: estimates for the UK and 14 other countries 」である 。その内容を日本の週刊朝日が記事として取り上げたのが以下のものである 。
日本人のがんの3.2%が診断用X線による被ばくが原因と推定されるという内容がその主たる部分である 。この数字は論文内に掲載された下のグラフで特徴づけられている 。日本の3.2%という値は各国のものに比べずば抜けており 、グラフの右上端に完全に飛び抜けた形になっている 。この論文の結果に対し 、日本の各団体から様々な見解がだされ 、計算手法に関する問題等が指摘されたが 、実際の医療現場で放射線を管理する立場にある私たち診療放射線技師は 、医療被ばくのマイナス面を再認識し 、EBM (科学的根拠に基づいた医療)を基本として 、その検査の 「正当化 」を確定し 、被ばく線量の把握と低減に努力しなければならない 。またこの記事は放射線診療に携わる者への警鐘として受け止めなければならない 。
上のグラフに示すように 、CTでの被ばく量は一般撮影に比べ数百倍となる 。しかしその量は私たちが年間にあびる自然放射線の量の数倍である 。1Svあたりの遺伝的影響の発生確率を1.0×10−2とすると 、女性腹部CT 8mSv の遺伝的影響は0.008%であり 、自然に発生している遺伝性疾患の確率1.3〜 1.0% (UNSCEAR 1988, 1993) と比較しても遙かに少ない 。また広島・長崎で原爆を受けた人々の子孫や 、高レベル自然放線地域にすむ住民 、あるいは職業上 、放射線を受けた人の子供などを対象に多くの調査が行われているが 、いずれも放射線によって遺伝的影響が発生したという事実 、証拠はない 。しかし 、確率的影響のもう一つの項目である発ガンについては 、小児白血病の疫学的調査で発生率の増加を認めた最小線量は10mGy ともいわれているため 、 小児については十二分な被ばく低減策が必須である 。 確定的影響については通常CT検査では問題とならないが 、特殊なCT perfusion や現在注目を浴びている心臓CT では 、同一部位に何度もX線を照射することから撮影パラメータの最適化に努力しなければならない 。
CT 装置の性能管理のための手法として
● CTDI (computed tomography dose index)
● CTDIw (weighted CTDI)
● CTDIvol = CTDIw/Pitch (helical)
● MSAD (multiple scan average dose)
● DLP (dose length product)
などが提唱されている 。
また新しい装置ではこれらの値を操作卓に表示することがIEC 国際電気標準 会議で義務づけられている 。これらの内容をよく理解し 、うまく利用することによって被ばくの最適化・低減に努めなければならない。