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【「3T−MRI」について 】

 近年、全身用3T 超高磁場MRI 装置が臨床使用可能となり、導入施設も増えているます。そこで、今回は3T 装置の特徴を簡単にまとめてみました。 


【1.高いSNR】

 SNR は静磁場磁束密度(B0) に比例するので、1.5T の2倍得られます。よって高解像度画像が得られるか、または撮影時間の短縮が可能であると考えられます。


【2. ケミカルシフトが大きい】

 同じくケミカルシフトも2倍になります。これによって、MRS には有利です。また、脂肪抑制は効きが増すでしょう。しかし、形態画像としてはケミカルシフトアーチファクトが増える欠点となります。これを改善するために受信バンド幅を広げなければいけないため、SNR は若干低下します。


【3. 磁化率効果が増大】

 これも同じく2倍となります。T2*イメージング−鉄沈着や出血などにはよいと考えられるが、体幹部など磁場不均一のあるところでは画像が大幅に劣化します。


【4. T1 緩和時間の延長】

 T1 値が延長するため、造影効果が高い。またTOF-MRA にて脳実質(バックグラウンド) の信号が持ち上がってこないため、血管の描出能は向上します。(画像参照) しかし、通常のT1 強調画像のコントラストを悪くします。(改善策は講じられている)


【5. SAR の増加】

 3.0T は1.5T の4倍のSAR となり、多くの制約が出てきます。撮影枚数の減少、または撮影時間の延長。特に呼吸停止撮影などではデメリットとなる可能性があります。また、発熱の可能性などによる被験者の不快感が問題になると考えられます。


【6. RF 磁場(B1) 不均一増大】

 磁場が高くなると、特に腹部にて均一な励起ができず、画像に感度ムラを引き起こすことがあります。


【7. 体内金属】

 これまで、1.5T では問題なしとされていた体内金属を、もう一度見直す必要があります。3.0T には対応していない金属があるからです。


【おわりに】

 以上から、頭部の撮影には良いですが、腹部に関してははまだ克服する課題を多く抱えており、現時点ではまだ万能な装置ではないといえるのではないでしょうか。改善されているものもあるようですが、今後はこのような多くのデメリットの克服に努力する必要があります。また、画像診断に関しては3.0Tならではの特色が出てくる可能性があり、今後様々なアプリケーションも開発されるでしょう。ただし、費用は現在のところ1.5T に対して、1.5倍から2倍かかります。1.5T と混在して使用する場合など、使い分けに多少の困難があるかもしれません。また一般病院において、相対的なスループットに関しては、使用の仕方にもよりますが、劇的によくなるとは考えにくいようです。


大阪赤十字病院 高津安男

(画像―左:3.0T、右:1.5T 提供:GE 横河メディカルシステム)