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【Dual Source CT って何? 】

【はじめに】

 CT は、1972年に登場して以来、1980年代後半にはヘリカルスキャン、1990年代後半には4列以上のマルチスライスCT へと進化を成し遂げました。そして近年では、64列のマルチスライスCT が臨床現場で活躍を始め、その進化はとどまるところを知りません。マルチスライスCT は、データ収集時間、体軸分解能にすぐれ、超短時間のスキャンと超精密診断を同時に実現可能としました。その多列化が進む中、64列に2つのX線管球が搭載されたDualSource CT (DSCT) が誕生したので紹介します。 


【DSCT の配置】

 DSCTには2つのX線管球とA-system、B-systemと呼ばれる2つの収集系が、 Fig.1 に示すように体軸方向となるZ軸方向ではなく、 X−Y軸で90度オフセットした位置で配置されています。 またA-system、B-systemそれぞれのX線焦点が描く軌道は一致することが保証されています。検出器ユニットはA-system がフルサイズであるのに対し、B-system は約50%にダウンサイジングしたものを搭載していますが、いずれの検出器ユニットについても焦点と検出器の中心チャネルを軸にしたシンメトリータイプのため、DSCT としてのFOV (Fieldof View) は常時500mm が保証されています。X線発生系は、管電流だけではなく、管電圧に関しても140kV と80kV の同時照射などのように、それぞれを完全に独立、かつ自由に制御することができます。

Fig.1 X線管球と検出器の配置


【DSCT による撮影】

DSCT には代表的な撮影モードとしてTable 1 に示すものがあります。
 Cardiac モードは心臓検査を目的としており、ECG 信号との同期によるデータ収集を行い、再構成されます。DSCT では心臓の再構成に必要とされる180度分の投影データを90度ずつに均等分割できるため、ひとつのX線管球が90度だけ回転すればよいこととなり、0.33秒のガントリ回転速度では83ms (330ms/4) の時間分解能となり、比較的高い心拍でもβブロッカーなどの投与が必要ないとされています。
 Dual Power モードではA-system、B-systemそれぞれに80kVのジェネレータを独立に搭載しているので、最大で160kW (120kV、1330mA) 相当の出力を確保でき、従来の画質を考慮して十分なテーブル速度を選択できなかったケースや、テーブル速度を優先し画質を犠牲にしたようなケースへの対応の幅が広くなり、被ばくを増加させることなくテーブル速度と画質が両立しやすくなりました。
 Dual Energy モードについては、従来であればCT 値だけを手がかりにナレッジベース(knowledgebase) によって血管内の造影剤の追跡を行い骨との分離を行っていましたが、X線の平均エネルギーの違いによって、同一物質が異なるCT 値を反映することを利用し、組成情報を認識しての精度の高いセグメンテーションが可能であり、石灰化の分離、腫瘍の組織判別、冠動脈内プラークの性状解析などの広い臨床応用が期待されています。


【被ばく線量】

 心臓検査における被ばくは、管電流制御機構により、心電図波形で画像再構成に必要な83ms を含む一定の時間のみ管電流出力を100%、それ以外の時間においては20%まで出力を低下させることができ、従来比で50%の線量低減がなされています。
Dual Energy モードの被ばくについての変化は、公表されていません。


【おわりに】

 2つのX線管球で検査するのは、コストパフォーマンスが問題になるでしょうが、DSCT の時間分解能の向上により、心臓検査の被ばく低減や、静止状態で検査ができない外傷患者や、小児患者、認知症患者においてのアーチファクトの低減、また、2つの独立したX線管球の加算による出力の向上で、肥満患者や、救急医療での安定した画質に期待が持たれます。現在日本において3台設置されているDSCT ですが、諸事情により2管球では臨床上運用されていません、間もなく2管球で稼動する予定です。


学術部 三浦洋平