【はじめに】
最近耳にする“VSRAD”とは何でしょう?今回は 、この“VSRAD”について簡単に紹介させていただこうと思います 。
VSRAD とは 、Voxel-Based Specific RegionalAnalysis System for Alzheimer's Disease の略で 、前駆期を含む早期アルツハイマー型認知症の診断を支援するためのソフトです 。早期アルツハイマー型認知症(以下早期AD) の診断は難しく 、医師の経験により診断に差が出たりすることがあるそうです 。早期AD では最も早く海馬傍回(記憶に関わる部位) が萎縮することがわかっています 。海馬傍回は体積も小さく 、CT 、MRI などの画像上では視覚的にはとても評価できません 。VSRAD ではMRI 画像を利用し 、この小さな海馬傍回の体積の萎縮度を正常脳と比較して(※1) 、数値で評価します 。この数値をZスコア(※2) で表し 、この数値が2.0を超えると9割以上の確率でAD の疑いがあることがわかるそうです 。しかし 、このソフトの結果から確定診断ができるわけではなく 、あくまでも早期AD を診断する上での支援をする目的で使用されます 。AD の症状の進行を抑える薬の投薬は 、AD の早期であればあるほど 、その効果が期待できます 。VSRAD を使って臨床上疑わしい症例を早期から診断していくことについては 、患者さん本人はもとよりその家族のためにも大きな利益をもたらすと思われます 。なおVSRAD 使用することについての保険請求はできません 。
【◎ VSRAD による基本的な処理の流れ】
前処理(1)頭部MRI (1.5T 矢状断3D-T1 強調画像※2) で撮像→ (DICOM サーバ 、CD 、DVDetc) → DICOM 非圧縮(RAW) データ→ (2)処理用PC にコピー→ VSRAD の処理(3)画像入力→(4)処理開始〜中間処理結果表示→画像処理/統計処理→(5)解析結果表示・レポート印刷
これは 、一括処理機能を有しており複数人の被験者を一括指定して順次処理することができます 。
【※1】
本ソフトウェアに実装されている健常者データは54歳〜86歳の80名を使用しています 。VSRAD で表示されている脳は被験者のものではなく健常者データベースに基づいたものであり萎縮しているところを色の種類でその程度を表示しています 。関心領域(ROI) が海馬傍回付近にあたり 、その部位の色の種類を見れば海馬傍回の萎縮とその程度が分かります 。なお健常者データよりも若い年齢の患者の場合についてはエラーが出る可能性があるそうです 。
【※2】Zスコアとは
被験者画像と健常者平均画像を統計比較した結果 、平均値からどれだけの標準偏差分離れているかを示す値です 。Zスコア 「2 」とは 、平均値から標準偏差の2倍を超えたものということになり5%の危険率で統計学的有意差があると評価されます 。
Zスコア= (健常者群平均ボクセル値−被験者ボクセル値)/健常者群標準偏差
ボクセル値とは各ボクセルの灰白質容積密度を明るさ(輝度) で表した値です 。
1ボクセルは2mm 立法(2mm×2mm×2mm)
【※3】MRI 撮像条件
(1) 3DT1 強調画像―グラディエントエコー法(2)矢状断(3)256×256マトリックス以下(4)スライス厚0.8〜2.0mm 程度(5) 全脳をカバー(6) AC-PCLine が水平に近い(顎が上がりすぎているとエラーを起こすことがあります 。) (7) 灰白質と白質のコントラストが良い(8) 画像にムラがない(9) 脳梗塞があると計算の妨げになる 。