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【 診療報酬について 】

= 最近の診療報酬改定の取り組みを含めて =



【 診療報酬とは 】  
 
 
診療報酬とは、病院などの医療機関が行った医療サービスに対する対価として受け取る報酬のことです。日本では、すべての国民がいずれかの医療保険の対象となりえる仕組みがとられており、国民は医療機関を受診する際に実際にかかる医療費の一部を自己負担し、残りが各保険基金から支払われることになります。
 診療報酬は、診察や治療(医療行為)ごとに決められた点数に基づいて計算されます。医療機関は、医療行為の点数を合計し、それを1点=10円で換算した金額を患者と診療報酬の支払機関から受け取ります。この報酬は、医療機関が検査や投薬の回数を増やすほど報酬も増える「出来高払い」が中心になっていますが、医療費のムダを省く狙いから病状の安定した高齢者の慢性疾患などには医療行為を問わず一定の報酬を支払う「包括払い(定額制)」が導入されています。


【 診療報酬改定の仕組み 】
 
 
診療報酬改定の手続は、中央社会保険医療協議会(中医協・厚労相の諮問機関)の議論を踏まえて、国の予算案を作成する際に診療報酬全体の平均改定率が決められます。その後、個々の診療報酬の点数(病院の初診料255点など)について、中央社会保険医療協議会の答申を受けて、厚生労働大臣が決めます。
 診療報酬の改定は、薬価等の改定とあわせておおむね2年に1度行われています。平成16年度の改定では、診療報酬と薬価等をあわせて、国民医療費との対比でマイナス1.0%(診療報酬 0%、薬価等1.0%減)の改定を行ないました。国民医療費とは、国民が1年間に使った医療費の合計(自己負担分以外を含む)のことです。


【 現在までの診療報酬改定の動き 】

 個々の診療報酬の単価は物価や人件費などの動向に応じ、定期的に水準が見直しされています。薬や医療材料など物の代金も診療報酬の一部として医療機関に支払われます。物の代金は公定価格で支払われますが、医療機関は実際には公定価格より安く仕入れるので、その差額(薬価差益)を得ています。過去20年間の改定では診療報酬の中で薬など物の単価を引き下げて差益を縮小してきました。一方で医師の技術料など診療報酬本体は一貫して引き上げてきました。
 薬価等を含めた全体で最も下げ幅が大きかった改定は1984年度のマイナス2.3%でした。しかし2002年度の診療報酬改定では賃金、物価の下落を反映して薬価等を含めた診療報酬全体をマイナス2.7%(診療報酬1.3%減、薬価等1.4%減)と、過去最大の引き下げ幅を決定し、診療報酬もマイナス1.3%と初のマイナス改定となりました。画像診断技術料の大幅な点数の引き下げは、我々技師にとってまだ記憶に新しいとことと思います。
 前回のマイナス改定を受け、日本医師会などの診療側は「医療の質を維持するためにも必要である」と診療報酬の引き上げを要求しています。しかし、逆に財務省と健康保険組合は「医療機関の経営努力はまだ不足している」として前回並みの引き下げを求めています。この背景には、医療保険制度が現実に直面している厳しい財政状況があります。その最大要因は急速な高齢社会の進行にあります。老人医療費を含む国民医療費は30兆円を突破、20年後には70兆円まで膨らむという試算もでています。政府が医療保険制度の抜本的な改善を先送りしてきたこともあり、今回の診療報酬改定も診療側にとって厳しいという印象は拭えません。


【 中医協の今後の課題 】

 今年から中医協は、診療報酬基本問題小委員会を発足させ、その中で診療報酬の基準を見直す研究が始められています。そこでは、入院治療に基本単価を設けるシステム(診断群分類による入院包括評価)、医療技術の適正な評価、医療機関のコストや機能の適切な反映などを研究の対象とし、患者の視点に立って見直しを進めることとし、客観性のある診療報酬の設定につなげたいと考えています。


【 日本放射線技師会の取り組み 】

 日本放射線技師会は前回の画像診断のマイナス改定を受け、又、診療報酬体系の抜本的な見直しが平成18年度に予定されているため、平成15年度に新たに診療報酬対策委員会を立ち上げ、診療報酬改定への要望書提出に向けた作業のため、放射線検査・治療における診療報酬改定への要望を各分野の方よりお聞きし、取りまとめています。要望書提出は、平成17年2月締め切りで、6月最終提出という短いタイムスケジュールですので、委員会では中医協・診療報酬調査専門組織の医療技術評価分科会調査(放射線治療関連)を参考に平成16年10月より専門分野への独自調査を実施し、又会員への調査を行い、根拠となる資料の作成作業を行っています。
 特に専門性、安全管理等を診療報酬に反映させたいと考えており、現在も引き続き厚生労働省と折衝しています。


以上、診療報酬について簡単に解説させて頂きましたが、詳しい診療報酬改定内容や審議状況は厚生労働省のホームページからご参照ください。

厚生労働省ホームページ 】 http://www.mhlw.go.jp



学術部 樫山 和幸