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【 乳がん検診について「“せいちゅうい”って何?」 】


【 背景 】  

 乳がんは年々増加傾向にあり、特に40代、50代という働き盛りの女性の罹患率が高いがんです。年間約3万5千人が発症し、約1万人が死亡しています。これを、減少させるために有効ながん検診の推進が求められるようになってきました。現在では、マンモグラフィ検診の導入が進められていますが、検診の 「質」が維持されているかが、大きな問題です。今までの視触診に、ただ単にマンモグラフィを追加するだけでは有効な検診は期待できません。マンモグラフィが効果を発揮するためには、高い撮影技術と高度な読影力が必要だからです。このため、質の良い検診を行うためには、検診施設の医師、技師の検診事前の教育・研修が必要です。また、検診に使用する装置の精度管理も必要となってきます。これらの対応を行うために、 マンモグラフィ検診精度管理中央委員会が発足し、マンモグラフィ認定試験や、施設画像認定試験が実施されるに至りました。


【 マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委) 】
 
 マンモグラフィ検診精度管理中央委員会は、厚労省が乳がん検診の精度維持、向上のために認めた委員会で、平成16年には特定非営利活動(NPO)法人としても認められました。マンモグラフィの精度管理について検討し、その管理運営を行うことを目的として設置された委員会です。検診関連の6学会によって構成されています。

その委員会の中には、
(1)教育・研修委員会
 撮影技師、読影医師に対して診断精度を一定に保つために読影、撮影などの教育研修の実施と評価を行う。
(2)施設・画像評価委員会
 検診実施機関に対して診断機器や画質などの評価と指導を行う。
以上、2つの委員会で構成されています。

検診関連6学会 とは以下の学会です。
 日本乳癌検診学会
 日本乳癌学会
 日本医学放射線学会
 日本産科婦人科学会
 日本放射線技術学会
 日本医学物理学会

精中委HP:http://www.mammography.jp/


【 認定試験とは? 】

 精中委主催または共催の講習会を受けないと認定試験は受験出来ません。また、一度試験を受けた後、6ヶ月以上経てば、ランクアップのための試験を受けることができます。認定後、実力確認のため、5年毎に更新試験を受けることが義務付けられました。
 
認定技師の試験は撮影技術(筆記)と読影からなり、試験結果によってA,B,C,Dにランク分けされA,Bのランクが認定されます。認定されると精中委のホームページに氏名と共に所属施設が公開されます。施設画像評価で認定された施設も同様に公開されています。


【 施設画像評価とは? 】

 乳房エックス線写真撮影の実施機関は日本医学放射線学会の定める仕様基準を満たした装置を有することが定められています。しかしながら、基準を満たした装置を使用していても、検診にふさわしくない画質や線量で撮影されている場合があるため、精中委が作成した基準をもとに、継続的に画像・線量評価および良い画質を得るためのマンモグラフィ施設・画像・線量評価を行うこととなりました。

【対象施設】
スクリーン/フィルムのアナログ・システム、CR等のデジタル・システムを用いたマンモグラフィによる乳がん検診および精密検査実施施設


【 認定とったらどうなん? 】

 厚労省の提言によると,現在のところは「認定を受けている施設で撮影を行うのが望ましい」とされています。認定を受けている施設名が公表される、あるいは地方自治体が検診委託をする場合の必須条件としているところもありますので、今後、少なくとも検診を行うに当たって認定が必須となる可能性が高いと思われます。


【 これまでの乳がん検診 】

 乳がん検診は、主に問診と医師の「視触診」のみの方法で実施されてきました。俗に云う、外科医の「神の手:ゴッドハンド」に頼っていたというのが現状であり、もちろん神の手がそんなにたくさん存在するわけがありませんし、フィルムのように客観的な記録として残るものはありません。
 
近年、厚労省は「視触診のみの検診は効果がなく、マンモグラフィの導入を検討すべきだ」とする研究班の報告を受け、マンモグラフィの導入に関して、早急な対応が求められるとの結論が示されました。
 時代は一人のブラックジャックより、3人の財前教授より、5人のDr.コトウより、認定を受けた10000人の普通の医師や技師を求めていたのです。


【 これからの乳がん検診 】

 厚生省は老人保健福祉局老人保健課長通達(老健第65号)により2000年以降、50歳以上は原則として2年に1度、検診でX線撮影を併用するという指針を出しました。
 
日本では、乳がんにかかる人の割合は40〜49歳が最も高い一方、この年代の乳房は50歳代に比べて乳腺が発達しており、マンモグラフィでがんを見つけにくいため、すぐには検診への導入に踏み切らず、検討課題として残されてきました。
 しかし、2004年4月「がん予防重点健康教育およびがん検診実施のための指針」の一部改正では、マンモグラフィの対象者を現在の50歳以上から40歳以上へ引き下げるべきだとする基本指針が示されており、厚労省は視触診のみの検診を廃止してマンモグラフィを全面導入する方針を固めています。
 また、厚生労働省の研究班報告では、50代のようにMLO1方向だけでなく、CCも加えた2方向で撮影すれば、乳腺の重なりが減り、画像診断の精度が上がると指摘。特に乳腺の密度が濃い人の場合は、超音波(エコー)との併用も検討すべきだとしました。



学術部 播摩 優子
 船橋 正夫