【 防災訓練と災害医療

 9月1日は、防災の日です。今年の防災の日は、首相辞任の発表があり、あまり大きな報道となりませんでしたが、かつて関東大震災(1923年)で多くの人々の命が絶えたことを忘れてはなりません。また9月は、11日米国同時テロ(2001年)、30日JCOの事故(1999年)のような人災の多かった月でもあり、台風による災害が相次ぐシーズンでもあります。関西における災害では、阪神大震災(1995年)やJR福知山線脱線事故(2005年)が記憶に新しいところです。今年の防災の日は、今世紀前半に起こると予測されている南海大地震(直近1946年)を想定し、国と近畿2府7県(三重県、徳島県を含む)が、岸和田市において合同防災訓練を行いました。訓練では、自衛隊による仮設テントの設営や炊き出し、仮設架橋等のインフラ整備から、倒壊したビルでの救助やヘリコプターによる患者搬送といった初動体制までが確認されました。残念ながら、災害時の医療については言及されませんでしたが、詳細はインターネットテレビ(http://nettv.gov-online.go.jp/channel.html?c=51) で報道されています。しかしながら、この日、愛知県や名古屋市では、近隣で8月末からの記録的な豪雨による浸水災害に見舞われたため、防災訓練は中止となったそうです。

 ヘリコプターといえば、大阪府は今年1月から大阪大学医学部附属病院にドクターヘリを配備しました。府では、このドクターヘリを利用して、災害発生時の救急医療を有効に機能させ、救護活動の質の向上を目指しています。その搬送件数は7月末までで36件ということで、今後さらに出動件数を増やし、新たな救急活動の一つとして普及させたい方針です(読売新聞9月9日朝刊)。果たして、このドクターヘリが未来の医療を支えることとなるのでしょうか。

 一方、5月に起きた中国西部大地震(2008年)の際には、日本からの国際緊急援助部隊(Japan Disaster Relief Team 以下JDR)が総勢23名派遣されました。国際的な災害救助活動においては、3種類のチームと自衛隊部隊を派遣できることが法律で定められており、それぞれ、災害による被災者の捜索・救助活動を行う救助チーム、被災地での医療・防疫活動を行う医療チーム、災害応急対策・災害復旧のための助言等を行う専門家チームがあり、1987年の法律施行以来2007年までに44件(医療チーム)の派遣実績があります。詳細は、JICAのホームページhttp://www.jica.go.jp/jdr/about.htmlに示されています。とくに、今回中国西部大地震の際、医療チームの一員として国立病院機構災害医療センターの放射線技師2名も派遣されており、当時の活動が、災害医療センターのホームページhttp://www.hosp.go.jp/~tdmc/dm_sisen.htmでも報告されています。今回はテント下での診療ではなく、病院支援という形での被災者を支援したそうですが、日頃の訓練は、日本国内での災害発生時にも、活かされているそうです。

 災害(天災)は忘れたころにやってきます。備えがあっても、その予想を覆されてしまうのが災害の恐ろしさです。日ごろから身の回りの安全に心がけ、自然災害についてもその対策を講じておかなければ被害を最小限に食い止めることはできません。不運にも災害に遭遇してしまった時、あなたと大切な家族と仲間を守るためにも、冷静沈着に行動するための心構えが必要です。                                 

(学術委員 藤崎 宏)