「コンビニ救急について」

◆医療現場をテーマにしたドラマやテレビ番組が人気を得ているようですが、視聴者は何に興味を示しているのでしょうか?非日常的または閉鎖的な世界への好奇心?医療に対する不信感?健康を害するという恐怖からの逃避?など懐疑的発想は容易に行えますが、慈愛と科(化)学技術が融合した医療という世界への羨望と敬意であって欲しいと筆者は願います

◆「コンビニ救急」という言葉を、至るところで耳にするようになりましたが、「コンビニ救急」という言葉の定義はないようです。コンビニエンスストア(略称コンビニ:convenience=好都合、便利)のように、患者自信の都合で24時間救急診療を希望することを揶揄した表現として使用されているようです。具体的には?昼間に受診できない(仕事を休めない)ので夜間に救急外来を受診する。?数日前から咳が続いていたが酷くなったので夜間に受診する。?子供の様子がおかしいので心配になって小児救急を受診する。?重症ではないが受診できる医療機関がわからないので救急搬送を依頼した。などなど社会的背景を含めた理由は様々で救急車の使用問題などと相まって救急医療の崩壊の原因の一つになっていると言われています。

◆夜間などの救急診療にも関わらず専門医療を要求する患者も少なくなく、以前このコラムでも取り上げた「モンスターペイシェント」問題にも波及しており、救急医療は誰のためにあるのかを考えさせられます。

◆救急指定を受けているにも関わらず、設備や人的要件など内情が伴わないなどの医療機関の理由によるしわ寄せが医療従事者にのし掛かっていることも事実です。

◆さまざまな問題を抱えたままで、救急隊や医療従事者の使命感や献身に頼った救急医療の運営が行き詰まりを見せ、救急現場の疲弊に繋がっている大きな要因とも考えられています。

◆日本の救急医療システムでは1次から3次に区分化され役割分担が行われています。(北米ER型の救急システムを行っている機関もある)しかし、このようなシステムを知る患者が少ないのも事実ではないでしょうか?医療機関が“救急指定”の看板を掲げていれば24時間365日救急を受け入れ、それが地域の基幹的病院であるなら高度専門医療を提供していて当たり前との錯誤が生じている可能性もあります。

日本救急医学会HPより抜粋

○ 1次救急病院:自己来院(Walk in)の入院を必要としない比較的軽症な場合

○ 2次救急病院:自己来院や救急搬送で入院治療が必要な場合

○ 3次救急病院:高度専門治療が必要な重症患者対応

◆「患者」と一言に言っても症状や重症度により多種多様で、上記のようにコンビニ的な安易な救急受診(特に2次救急や3次救急)により本当に救急診療が必要な患者に対して医療の提供ができなくなっており、救急搬送を受け入れられないなどの状況が社会的問題となっています。

◆以前はマスコミも救急搬送の受け入れ問題など医療提供側を悪者(?)にして社会を扇動しているような風潮を感じましたが、昨今は医師不足問題など医療現場の実状を踏まえた上での救急医療の崩壊に注目しはじめ、「コンビニ救急」や「モンスターペイシェント」など患者側の問題も含めた制度や体制にまでも言及するようになっています。

◆救急医療現場の実状や医療従事者の疲弊を理解し、「コンビニ救急」や安易な小児救急の受診を自粛して救急医療の存続に協力する市民団体も現れているそうです。

◆社会が医療全体に注目しはじめた今こそ、医療の一躍を担っている診療放射線技師も「コンビニ救急」や「モンスターペイシェント」への対策を考える時期ではないでしょうか?

学術部 鈴木 賢昭