今、話題のCTについて

【はじめに】
 医療機器の発展はめざましく、これはCTにおいても例外ではありません。今から2年程前、なんでもコラム第28章でDual Source CTについてご紹介させていただきました。しかし、その後も各社より様々な新技術が開発され臨床投入されたため、今回のなんでもコラムでは、現在の臨床実機に搭載されているCTの管球および検出器についてご紹介させていただきます。

【管球】
 心臓検査や多時相の造影CT検査等を考慮し、管球の基本的な蓄積熱容量が大きくなり、現在、最大でその容量は8.0 MHUです。また、熱蓄積時のクーリングに重点をおき、管球壁自体に陽極(アノード)を取り付けることで、冷却オイルにて直接陽極を冷す構造のものがあり、その最大冷却効率は7.3 MHU/分(この管球の管球容量はメーカーのカタログ値で30 MHU相当)にも至ります。
 体軸方向の分解能向上とウィンドミルアーチファクト(体軸方向サンプリングのエリアシングにて発生する風車状アーチファクト)の低減を目的とし、X線ビームの焦点位置を高速移動させ、サンプリング密度を高める管球もあります。薄い収集スライス厚が主流の現在においても、ウィンドミルアーチファクトは錐体、肋骨、脊椎などから少なからず認められるため、この手法は、画像理論に忠実に従った手法と言えます。ウィンドミルアーチファクトはエリアシングに起因するため、その低減方法は薄い収集スライス厚の選択、体軸方向の高サンプリング化が一般的ですが、エリアシングを考慮した補間法による低減手法も研究論文レベルで報告されています。また、体軸方向に2つの焦点を持つことで、128列の検出器で256スライス分のデータが収集できるCT(0.27 sec/1回転)もあり、列数で検討するか、スライス数で検討するのかわれわれユーザーも考慮が必要です。

【検出器】
 1990年代半ばに4列以上のマルチスライスへと進化したCTは、現在、320の検出器列か構成された面検出器を有するものもあります。この面検出器CTは320列全ての検出器を用いてのヘリカルスキャンは不可能で、ノンヘリカルスキャン時のみ320列が有効に利用されます(ヘリカルスキャン時は64列で使用。先ほど紹介した256スライスCTはヘリカルスキャンで使用可)。一昨年のRSNAに登場するまでは、「256列で登場?」と噂されていたのですが、ノンヘリカルスキャンで頭部、心臓、肝臓領域等の撮影範囲を考慮し、これらを全検出器幅で十分にカバーするために(256列では12.8 cm、320列では16 cm)320列での登場となった経緯があるそうです。実際に臨床で使用しているユーザーの声を聞くと、頭部領域や心臓領域はもちろんのこと、小児のCT検査(頭部や胸部)での短時間撮影(16 cmのフルスキャン0.35秒)の活躍も素晴らしいみたいです。
 さらに、最近登場したものでは、検出器のシンチレータに1月の誕生石、つまりガーネット(宝石)を採用して、優れた光学特性や応答特性を有すると言われる機種もあります。実際にどれだけ優れた検出器なのかは、これから臨床の場で評価されることと思います。

【おわりに】
 マルチスライスCTは、多列化ばかり進むだけでなく、コーン角を考慮した再構成法を各社開発し、高分解能化、撮影時間の短縮化に加え正確な画像データの構築がされつつあります。心臓などの動きのあるものを対象とした場合、撮影時間は短いに越したことはありません。しかしながら、われわれは患者さんと接する職業ですので、撮影時間が短縮されても患者さんとのコミュニケーションは忘れてはなりません。患者さんの更衣や寝台の乗り降りする時間は変わらないので、スループットには限界があります。また、診療放射線技師は多列化によりもたらされた高分解能な画像をどう扱うかをこれからも学んでいかなくてはなりません。CTが今後どのような方向性で発展していくかが楽しみです。

学術部 三浦 洋平