「乳がん検診用超音波装置について」

【はじめに】

 乳がん検診にマンモグラフィが導入されて久しく、その成果が十分に認められている今日ですが、最近その乳がん検診に超音波検査を導入する自治体が増えてきております。「乳房超音波診断ガイドライン(南江堂)」などを発刊し、体表領域の超音波診断をリードしている日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)でも積極的に超音波検査を検診に導入する試みがなされており、検診用精査基準(乳房超音波診断フローチャート)の作成や、乳腺超音波講習会の開催など様々な活動がなされているようです。

そんな中、今年4月に横浜で開催された「2009国際医用画像総合展」にて、シーメンス旭メディテック(持田シーメンスメディカルシステム株式会社)よりACUON S2000と超音波自動ボリュームスキャナABVS(Automated Breast Volume Scanner)が発表されましたので、紹介させていただきます。

【ACUSON S2000 ABVSの特徴】

 乳房超音波検診への関心が高まる中、シーメンス社は新たにシーメンス社製の超音波装置の中でもハイスペックな性能を誇るACUSON S2000に組み合わせて使用する乳房超音波検査専用スキャナABVSを開発しました。

 この専用スキャナは、従来の超音波診断装置に使用するプローブに比べ、視野幅が広く(15.4cm×16.8cm×6cm)、また自動でスキャンを行うという特徴があります。これによって、広範囲のボリュームデータを簡便な操作で短時間(両側乳房で4〜5分)に収集することが可能になりました。

 また、取得したボリュームデータを専用のワークステーションで解析することにより、様々な断面を取得することが可能になりました。特にコロナル断面は診断に非常に有用であり、乳がんの浸潤の度合いや術前シミュレーションなどへの活用も期待されております。

【従来の乳房超音波検査との比較】

従来の超音波検査の弱点

ABVSでの解決

比較的長い検査時間(15〜30分)

検査時間の短縮(10分未満)

画像の再現性が低い

ボリュームデータを収集することで   画像の再現性が高まる

画質が検者に依存する

自動スキャンによる安定した画像   データの取得が可能


【おわりに】

 ACUSON S2000 ABVSは、圧迫による痛みや受診者の被ばくなどの侵襲がないという超音波検査の元来の利点を活かし、なおかつ検査時間も従来の超音波検査に比べ短縮できるため受診者の負担軽減が期待されます。今後、超音波検診の導入が進むにあたって注目すべき装置ではないでしょうか。以上、2009国際医用画像総合展からのトピックスでした。

学術委員 磯野仁美