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【 個人情報保護法施行について 】



 近年、社会の急速な進展に伴い、コンピュータやネットワークを利用して大量の個人情報が処理されています。こうした個人情報の取扱いは、今後ますます拡大していくものと予想されますが、個人情報は、その性質上いったん誤った取扱いをされると、個人に取り返しのつかない被害を及ぼす恐れがあります。
 4月1日からの個人情報保護法施行に伴い、厚生労働省は医療、介護関係者向けの指針をまとめ、都道府県に通知しました。そこでは、医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドラインを公表しています。


【 ガイドラインについて 】

【 趣 旨 】

 このガイドラインは 「個人情報の保護に関する法律」 (平成15年法律第57号。 以下 「法」 という。) 第6条第3項及び第8条の規定に基づき、 法の対象となる病院、 診療所、 等の事業者等が行う個人情報の適正な取扱いの確保に関する活動を支援するためのガイドラインとして定められたものです。



【 構成及び基本的考え方 】

 個人情報の取扱いについては、 法第3条において 「個人情報が、 個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものである」 とされていることを踏まえ個人情報を取り扱うすべての者は、 その目的や様態を問わず、 個人情報の性格と重要性を十分認識し、 その適正な取扱いを図らなければならないとされています。

 特に、 医療分野は、 「個人情報の保護に関する基本方針」 (平成16年4月2日閣議決定。 以下 「基本方針」 という。) 及び国会における附帯決議において、 個人情報の性質や利用方法等から、 特に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある分野の一つであると指摘されており、 各医療機関等における積極的な取組が求められています。


【 ガイドラインの対象となる事業者の範囲 】

 法令上、 「個人情報取扱事業者」 としての義務等を負うのは医療・介護関係事業者のうち、 識別される特定の個人の数の合計が過去6ヶ月以内のいずれの日においても5,000を超えない事業者 (小規模事業者) を除くものとされています。 しかし、 医療・介護関係事業者は、 個人情報を提供して医療・介護関係事業者からサービスを受ける患者・利用者等から、 その規模等によらず良質かつ適切な医療・介護サービスの提供が期待されていること、 そのため、 良質かつ適切な医療・介護サービスの提供のために最善の努力を行う必要があること、 また、 患者・利用者の立場からは、 どの医療・介護関係事業者が法令上の義務を負う個人情報取扱事業者に該当するかが分かりにくいこと等から、 ガイドラインにおいては個人情報取扱事業者としての法令上の義務等を負わない医療・介護関係事業者にもガイドラインを遵守する努力を求めています。


【 「個人情報」 の範囲 】

 法令上 「個人情報」 とは、 生存する個人に関する情報であり、 個人情報取扱事業者の義務等の対象となるのは、 生存する個人に関する情報に限定されています。 ガイドラインは、 医療・介護関係事業者が保有する生存する個人に関する情報のうち、 医療・介護関係の情報を対象とするものであり、 また、 診療録等の形態に整理されていない場合でも個人情報に該当します。 しかし、 医療分野においては、 医療は死と向き合う分野であり、 死者の情報についても安全管理や開示に配慮する必要があるため、 死者の情報について他の分野の情報とは異なる別格の措置が必要と考えられ、 患者等が死亡した後においても、 その情報を保存している場合には、 漏えい等の防止のため、 生存する個人の情報と同等の安全管理措置を講ずるべきです。 又、 受付での呼び出しや、 病室における患者の名札の掲示などについては、 患者の取り違え防止など業務を適切に実施する上で必要と考えられますが、 医療におけるプライバシー保護の重要性にかんがみ、 患者の希望に応じて一定の配慮をすることが望ましいとされています。

*医療機関等における個人情報の例

診療録、 処方せん、 手術記録、 助産録、 看護記録、 検査所見記録、 エックス線写真、 紹介状、 退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約、 調剤録 等



【 医療・介護事業者が行う措置 】

  医療・介護関係事業者は、 個人情報保護に関する考え方や方針に関する宣言 (いわゆる、 プライバシーポリシー、 プライバシーステートメント等) 及び個人情報の取扱いに関する明確かつ適正な規則を策定し、 それらを対外的に公表することが求められます。 医療・介護関係事業者は、 個人情報の取扱いにあたり、 法、 基本方針及びガイドラインに示す項目のほか、 個人情報保護又は守秘義務に関する他の法令等 (刑法、 関係資格法、 介護保険法等) の規定を遵守しなければなりません。

 以上のガイドラインを踏まえ、 我々医療関係者は、 個人情報の管理には従来よりも細心の留意をしなければならないと考えられます。



学術部 大泉  隆 
 三浦 洋平