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【 臨床研究に関する倫理指針について 】



 みなさん、知っていますか?初めて耳にする人も私には関係ないと思っている方も、ちょっと手を止めて息抜きのつもりで目を通して下さい。

【 「なんのため」にできたの? 】

 もちろんこの指針が出来たのは医学の進歩のため、患者さんのためです。日々進歩している医療において、疾病の予防方法、診断方法および治療方法の改善、あるいはその有効性や効率性について臨床研究を通じ、絶えず再検証されなければなりません。しかし、科学的・社会的利益が被験者への配慮より優先させてはいけません。近年特に、被験者に説明し同意を得ることが重要と考えられるようになり、プライバシーの権利に関する意識の向上や個人情報保護が求められるようになってきました。そこで、臨床研究の適正な推進を図るため、研究者がより円滑に臨床研究を行うことができるように「臨床研究に関する倫理指針」が定められ、平成15年7月30日から施行されました。さらに、個人情報保護法の趣旨を反映させて改正を行い、新たに平成17年4月1日から適用されています。

 この指針は、世界医師会によるヘルシンキ宣言を踏まえ、臨床研究を行う研究者等が遵守すべき基本的な原則をまとめられたものです。



【 「臨床研究」ってなに? 】

 臨床研究とは疾病の予防方法、診断方法および治療方法の改善、疾病原因および病体を理解するために行い、患者さんの生活の質の向上を主目的とする医学系の研究をいいます。人を対象とする研究ですが、個人を特定できる材料やデータに関する研究も含みます(亡くなられた方のデータなども対象となります)。血液や細胞さらにこれらから抽出したDNA、さらに診療情報も含まれますので、X線フィルムや画像データも含まれます。また、通常診療行為以外に被験者へ放射線を照射する場合も適用されると考えられるので、われわれ診療放射線技師が行っている研究にも少なからず含まれる場合があります。


【 個人情報の保護 】

 被験者への配慮として最も重要なのが、個人情報を保護することであり、「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)第8条の規定に基づき、定められています。今回の改正で、研究責任者、研究者等および組織の代表者にそれぞれ個人情報の保護に係る責務について、詳細に追記されました。

 臨床研究の結果を公表する場合には、被験者を特定できないように配慮する必要があります。個人情報の目的外の利用や利用目的の変更、あるいは第三者への提供を同意なしで行うことはできません。また、個人情報が漏洩しないように安全管理に適切な処置を講じておく必要があります。


【 倫理審査委員会 】

 臨床研究を行う機関には、倫理審査委員会を設置しておかなければなりません。ただし、機関が小規模で設置できない場合は、学会等に設置された倫理審査委員会に審査を依頼することができます。倫理審査委員会は、医学の専門家はもちろん自然科学の有識者や法律の専門家などから構成され外部委員も含む必要があります。研究者等は研究計画書を作成し、倫理審査委員会がこの指針を踏まえつつ、個々の研究内容に応じて適切に審査することになります。

 皆さんの施設には、倫理審査委員会は設置されていますか?設置されている場合は、どのような方々で構成されているか一度調べてみてください。



【 インフォームド・コンセント 】

 臨床研究の被験者になって頂くために、必要な手続きです。研究者等は臨床研究を実施する場合には、被験者に対し事前にその意義、目的および方法、起こりうる利害の衝突、期待される利益と危険性などについて十分に説明しなければなりません。これらの説明した内容ついて理解したことを確認し、被験者の自由意思によって、文書でインフォームド・コンセントを受けなければなりません。また、被験者はいつでも不利益を被ることなく撤回する権利についての説明も必要です。

 以上、「臨床研究に関する倫理指針」について簡単に紹介させていただきました。今回は、「倫理」という敬遠されがちなテーマでしたが、最後までお読みいただいた方で「全く自分には関係のない話やった」という人は少なかったと思います。実際、どのような研究がこの指針の適用範囲に入るのか分かりにくいところもありますが、手間を省いたばかりに、価値ある研究も違法な研究とならないように、詳細はホームページを参照して、再度ご自身で確認して下さい。

厚生労働省 「臨床研究に関する倫理指針」
http://www.imcj.go.jp/rinri/main/02.htm



学術部 藤田 秀樹
 中山 書利