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【 資格認定制度について 】


【 はじめに 】

  昨今,我々の所属する様々な団体の活動を見ても,専門医制度や認定医制度などを意識した資格認定制度があふれているのが現状です.私たちが属する社団法人日本放射線技師会(以下日放技)は,生涯学習システムの一環として技師格制度を採用しています.これは診療放射線技師全体が社会の中で認められるための活動のとして,まず手始めに医療の中で認められるための基礎知識を習得するアドバンスド放射線技師格があり,さらに進歩的な技術や管理能力などの知識を習得した職業関連学士としてのシニア診療放射線技師格,またある部門における研究を極めた職業関連博士としてのマスター放射線技師格があります.このシステムが普及することによって,技師個人の資質向上に続く国民への保健・福祉の向上に与える影響に関しては疑う余地のないものです.一方,私たちを取り巻く各種の資格認定制度について,国家資格を含めこれでとどまらず多岐にわたっています. 今月は,私たち診療放射線技師が生涯を通じて積み重ねていくべき,自己研鑽の一つの手段としての資格認定制度について特集をしてみます.ここでお知らせする内容が資格認定制度のすべてではありませんが,より高きを見つめつつ生きるべき医療人である私たち診療放射線技師にとって,多少なりともお役に立てばと願っております.


【 各種の資格制度 】

1.まずは診療放射線技師免許について

 認定機関はご存じ厚生労働省です.近年の合格率の全国平均は70%台を推移しています.試験の傾向も変わりつつあり,臨床技術についての知識や放射線画像の読影能力を問われる問題もよく見られています.今年は救急蘇生法や撮影室の消毒に関する問題も出ました.


2.放射線管理士について

 放射線利用施設における適正な放射線管理を行うことや,医療施設における医療被ばくの低減に努めること,事故等による緊急被ばくから住民を守ることを通じ国民に貢献すべく日放技が認定しています.日放技が主催する管理士講習を受講した後,認定試験を受講します.受講資格はアドバンスド放射線技師である必要がありますが,現在は経過措置のため,免除されています.


3.放射線機器管理士について

 医療施設における医用画像機器や放射線治療装置の性能を維持し,安全を確保することを目標とすします.放射線管理士と同様に認定講習会受講後に認定試験を受験し,合格することによって認定されます.受験資格はアドバンスド放射線技師で,こちらも現在は免除されています.


4.医用画像情報管理士について

 近年,急速に発達しつつある情報通信分野は医療の中でも同様に普及発達を遂げてきています.デジタル画像の増加は私たちの業務にも影響を及ぼし,情報通信の知識は必要不可欠であると言っても過言ではありません.それらの安全な運用に関わる知識や技術を習得することによって,より良い医療を国民に提供することを目指しています.認定には,医用画像情報管理士試験を受験し,合格する必要があります.アドバンスド放射線技師である必要がありますが,こちらも現在は免除されています.


5.第一種放射線取扱主任者免許,第二種放射線取扱主任者免許について

 認定機関は文部科学省です.試験実施団体は財団法人放射線安全技術センターで,毎年8月下旬に試験があります.第一種の合格率は10%台から30%まで,第二種は20%〜40%程度で,年によって大きく異なります. http://www.nustec.or.jp/index.html


6.胃がん検診専門技師認定制度について

 認定機関は(社)日本消化器集団検診学会です.年一度の認定試験を受け,更新期限は5年間で学会集会に参加した実績が必要です.受験資格は,診療放射線技師もしくは診療エックス線技師であること,学会に3年以上継続して会員であること,実績証明を含む必要書類を提出することです.さらに施設として必要な手段をふみ,精度管理や学会・集会への参加実績が満たされれば学会認定技術指導施設として認可されます.
http://www.jsgms.or.jp/


7.超音波検査士について

 認定機関は(社)日本超音波医学会です.受験資格は日本超音波医学会もしくは日本超音波検査学会に3年以上在籍すること,看護師,准看護師,診療放射線技師,臨床検査技師のいずれかの免許を所有すること,受験する臨床領域で150症例以上を経験していること,学会認定超音波専門医に推薦してもらうことです.臨床領域は体表臓器,循環器,消化器,泌尿器,産婦人科の5領域に分類されます.やはり5年毎に更新手続きをする必要があります.
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsum/ http://www.jss.org/


8.臨床技能検定について

 正式には臨床技術能力検定と言います.これは私たち自らの診療における技術の習熟度レベルを確認し,その技能に対する社会一般の評価を高め,国民から信頼される診療放射線技師職としての資質確保を目的として実施しています.検定の等級は1級から3級まであり,1級が高度となります.検定科目は以下のようになっています.試験は筆記試験で2級では一部実技試験があります.1級では実技試験と口頭試験があります.


1)放射線治療分野   
  照射技能検定
  計画技能検定
  線量測定技能検定

2)核医学分野   
  放射性医薬品取扱い技能検定
  一般核医学検査技能検定   
  特殊核医学検査技能検定

3)検査技能検定分野   
  
X線CT検査技能検定   
  一般撮影技能検定   
  MRI検査技能検定   
  超音波検査技能検定   
  乳房検査技能検定   
  上部・下部消化管技能検定   
  心・血管撮影検査技能検定  

4)読影技能分野   
  胸部画像読影技能検定   
  腹部画像読影技能検定   
  骨画像読影技能検定   
  乳房画像読影技能検定   
  中枢神経画像読影技能検定


9.マンモグラフィ撮影診療放射線技師について

 認定機関はマンモグラフィ検診精度管理中央委員会です.所定の講習会を受講し,試験を受けます.試験評価A,Bの人をマンもグラフィー撮影診療放射線技師とします.Bランク以下の人は6ヶ月以上の研修を積んだ後,試験を受験します.詳しくは¥「なんでもコラム第4章」をご覧ください.
http://www.mammography.jp/


10.放射線治療品質管理士について

 認定は放射線治療品質管理機構です.本管理士は,放射線治療の品質管理に関わる作業を自ら責任を持って行うとともに,品質管理の観点からの病院全体の業務の監督、連絡・指示の伝達周知,管理部門への改善措置の提案等を行い自主的な品質改善活動や「放射線治療の質」自体の向上を目的とした幅広い活動を行うとしています.資格申請後,審査を経て認定されます.資格の有効期限は3年で,更新時は放射線治療における品質管理に従事した実績や,講習会の受講証明などを添えて申請します.詳しくは「なんでもコラム第2章」をご覧ください.
http://www.ics-inc.co.jp/qcrt/index.html


【 おわりに 】

 他にも各種資格はあるようです.これらの資格制度の主旨は,すべてが医療の現場をはじめ多様な場面において国民の皆様に還元されるべく制定されています.私たちもそれぞれの立場で,自分たちの能力を十分に発揮できるよう自己研鑽に励みたいものです. 大阪府放射線技師会では,今年度も多くのセミナーやイベントを実施してまいります.これらも資格認定制度と同じく私たち放射線技師のスキルアップにつながり,多くの患者様のお役に立てることを願っています.



学術部 坂下 惠治