【 はじめに 】
なんでもコラム第4章 乳癌検診について「“せいちゅうい”ってなに?」でも記述していますように、乳がんは年々増加傾向にあり、年間約3万5千人が発症し、約1万人が死亡しています。これを、減少させるために有効ながん検診の推進が求められるようになってきました。現在では、マンモグラフィ検診の導入が進められていますが、検診の 「質」が維持されているかが、大きな問題です。今までの視触診に、ただ単にマンモグラフィを追加するだけでは有効な検診は期待できません。マンモグラフィが効果を発揮するためには、高い撮影技術と高度な読影力が必要だからです。このため、質の良い検診を行うためには、検診施設の医師、技師の検診事前の教育・研修が必要です。また、検診に使用する装置の精度管理も必要となってきます。これらの対応を行うために、 マンモグラフィ検診精度管理中央委員会が発足し、マンモグラフィ認定試験が実施されるに至りました。
【 認定試験とは? 】
精中委主催または共催の講習会を受けないと認定試験は受験出来ません。認定技師の試験は撮影技術(筆記)と読影からなり、試験結果によってA,B,C,Dにランク分けされA,Bのランクが認定されます。
試験は
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読影試験 |
40症例 80枚
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100点
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筆記試験(撮影技術) |
20問
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200点
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合計300点
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80%以上(240点以上) |
A |
合格 |
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75%以上80%未満(225点〜239点) |
B1 |
合格 |
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70%以上75%未満(210点〜224点) |
B2 |
合格 |
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60%以上70%未満(180点〜209点) |
C |
不合格 |
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60%未満(209点以下) |
D |
不合格 |
《読影試験》
40症例 80枚のフィルムの読影をし カテゴリー分類を行いますが、通常50名以上の受験者がいますのでシャウカステンの前は混雑・混乱します。1例目から順に読影できればいいのですが時間制限もありそんなことはいっておれません。途中の症例からでもいいですから順に読影しましょう。次の症例が混雑しているからといって飛ばして読影しているとマークシートが訳わからなくなります。あせらずじっくり読影しましょう。
迷ったときはfirst impressionも大切ですよね?
《撮影技術(筆記試験)》
過去に認定技師試験を受験された方のお話を聞いていますと 初期の頃はテキストも『放射線医療技術学叢書 乳房撮影精度管理マニュアル』(日本放射線技術学会)を使用していたように筆記試験においては基礎知識・撮影技術・撮影機器と品質管理といったところから大半の問題が出題されていたようです。しかし、近年の傾向をみると上記テキストに加え『マンモグラフィガイドライン』(医学書院)、『マンモグラフィによる乳がん検診の手引き』(日本医事新報社)等に記載されているように今までの基礎知識・撮影技術・撮影機器と品質管理に加えて乳腺疾患・病理・手術・治療にいたるまで幅広い知識が必要とされていると思われます。
精中委HP:http://www.mammography.jp/
【 代表的な乳腺疾患と病理 】
特に『乳癌取扱い規約』の乳腺腫瘍の組織学的分類は頭に入れておいて損はないと思います。
ここでは乳腺疾患と病理について代表的なものについて簡単に説明します。
乳癌は非浸潤癌、浸潤癌、パジェット病(Paget’s disease)の大きく3型に分類できる。マンモグラフィで病変を認識できる非浸潤癌のほとんどは非浸潤性乳管癌(DCIS)で全乳癌の10%程度を占めている。
1.非浸潤癌
1) 非浸潤性乳管癌(DCIS)
非浸潤性乳管癌(DCIS)には亜型として乳頭型、低乳頭型、アーチ型、篩状型、コメド型、充実型、匍匐型、平坦型に分類できる。一般的には非浸潤癌のマンモグラフィ診断は難しく淡い腫瘤陰影としてや左右の乳腺濃度の増加、構築の乱れ、局所的非対称陰影(FAD)として病変の存在に気付くことがある。しかし石灰化像を示す場合の診断は比較的容易である。コメド型は画像診断上もっとも重要で乳管中心部に壊死物質が蓄積し、その中央部分に石灰化が生じ典型的な微細線状、微細分枝状、区域性、線状、集簇性石灰化を呈するのが特徴である。篩状型はたくさんの小腺腔内に小さく不整型の分泌型といわれる石灰化を呈する。
2.浸潤性乳管癌 (全乳癌の80〜90%程度)
乳頭腺管癌・充実腺管癌・硬癌の3型に分類し、症例分布は1:1:2である。
1) 乳頭腺管癌
高分化癌であるため、腺管形成が明瞭である。浸潤性の腫瘤を形成するが、びまん性の浸潤をきたすことはないので比較的境界明瞭な不整形な腫瘤陰影として描出される。乳管内成分が優位な乳頭腺管癌ではDCISと同じような所見を呈するがあるので注意すべきである。
2) 充実腺管癌
管外圧排性で中ないし低分化、比較的境界明瞭な高濃度腫瘤陰影として認められるが、微細鋸歯状・細かいスピキュラを形成する。他の組織型と比べて乳管内進展の程度は低い。
3) 硬癌
最も低分化の浸潤性乳管癌であり、びまん性ないしは小さな胞巣を形成し浸潤、増殖する。腫瘤は不整形、境界不明瞭でクーパー靱帯を引き込むことが多く、ほとんどの場合スピキュラ形成がみられる。
3.特殊型
1) 粘液癌
純型では境界明瞭平滑な円形、楕円形時に分葉形の腫瘤像を呈する。混合型はやや高濃度、境界はやや不明瞭、分葉状の腫瘤を認めることが多い。
2) 浸潤性小葉癌
癌細胞は結合に乏しく、びまん性に浸潤する性質を有する。癌細胞は結合組織内の膠原繊維束を裂くように浸潤し、その間隙の中を癌細胞がつながるように浸潤する。マンモグラフィでは淡い腫瘤陰影もしくは濃度上昇を呈する。乳管癌と異なる点が多い。
もちろん、読影、病理だけでなく機器管理、撮影法、解剖、画像評価、精度管理とたくさん勉強しなければなりませんが・・・・
【 おわりに 】